かまがや取材日記 渋谷総司資料室 令和2年4月14日

更新日:2020年4月21日

佐津間出身の志士


パネルなどが展示されている資料室内部

 鎌ケ谷市中佐津間の「渋谷家住宅」が先月、鎌ケ谷4丁目のかつての旅籠「丸屋」とともに国の登録有形文化財とするように答申されました。登録されれば市内初の登録有形文化財となり、緩やかな保護措置が講じられます。

 

 渋谷家は江戸時代後半に代々佐津間村の名主を務めた豪農で、幕末に倒幕運動に身を投じた渋谷総司の生家です。地元出身のこの志士については詳しく知りません。この機会に少し勉強しようと思い、佐津間自治会館内の渋谷総司資料室を元自治会長の中村弘さん(85)にお願いして見学させてもらいました。自治会館は住民らが協力して平成25年に建設し、その際、地元の歴史を知ってもらおうと中村さんらが資料室も開設したのです。

 

 渋谷総司の生涯を簡単に紹介します。弘化3年(1846)に渋谷家の次男として生まれた総司は青年期に江戸で文武を学び尊王攘夷派の志士たちと交流を深め、長州・薩摩藩を中心とした新政府の部隊「赤報隊」に加わり幹部となります。しかし、新政府の征討軍の先鋒隊として京都から東進していた慶応4年(1868)3月、突然、「偽官軍(にせかんぐん)」として現在の長野県下諏訪町で幹部7人とともに処刑されました。理由は、実現不可能な年貢半減の布告の責任を取らされたなど諸説あるようです。まだ22歳の若さでした。

 資料室は、(1)ふるさと佐津間(2)総司の生い立ち(3)薩摩藩邸浪士隊(4)赤報隊(5)渋谷総司の最期(6)年表(7)復権運動と名誉回復の7コーナーに分かれており、パネルなどを使って分かりやすく解説されています。中には「刀を作るので30両送ってくれ」と兄に金を無心する手紙(複製)や赤報隊に関する書籍なども展示されています。

 

 個人的に目を引いたのが明治から昭和にかけて活躍した小説家、島崎藤村の『夜明け前』に赤報隊についても書かれてあるとの説明でした。「木曽路はすべて山の中である。」という書き出しが有名なこの小説は、幕末・明治維新にかけての馬籠宿(現在の岐阜県中津川市馬籠)を舞台に、主人公である本陣・庄屋の当主の波乱万丈の生涯を描いています。主人公のモデルは島崎藤村の父親です。

 

 『夜明け前』は読んだことがあるのですが、赤報隊についての記述は覚えていませんでした。「ひょっとしたら赤報隊が馬籠を通った際、総司は島崎藤村の父親と会っていたかもしれませんね」と中村さん。「赤報隊と夜明け前」「総司と藤村」。思わぬつながりを発見しました。歴史とは面白いものです。

 

 偽官軍とされた総司ですが、遺族らの復権運動の末、昭和3年(1928)に贈位を受け名誉は回復されます。自治会館近くのお寺、宝泉院には石碑(顕彰碑)も建てられました。

 

 自治会館と資料室は新型コロナウイルスの拡大防止のため現在、休館中です。開館後は土曜日10時から13時まで公開しますので、お出かけください。


総司の手紙を前に説明する中村さん


佐津間自治会館の外観


宝泉院の石碑(顕彰碑)

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