お口の健康
更新日:2021年2月16日
目次
【備考】感染症予防以外の歯科情報は以下のリンク先をご覧ください。
歯と口腔の健康づくり
子どもの歯の健康
第1回 感染予防として、口腔ケアを
ウイルスの侵入を防ぐためには「歯磨き」が大切だと知っていますか?
歯磨きをおろそかにしていると、細菌が塊となりプラーク(歯垢)となります。プラークの約1ミリグラムには、約2億から3億個もの生きた細菌が存在し、むし歯や歯周病の原因になるだけでなく、全身疾患の原因となる細菌が潜んでいます。そしてこれらの細菌は、インフルエンザウイルスなどを粘膜に侵入しやすくする酵素を出すため、ウイルスによる発症や重症化を招きやすくすると言われています。
これらのことから、免疫力を正しく機能させ、様々な病気になるリスクを減らすためにも口腔ケアは大事なのです。
今回は基本的な歯磨きのポイントを掲載していきます。
歯磨きのポイント
(1)優しい力で磨く
優しい力とは毛先が広がらないくらい(150グラムから200グラム)です。毛先を押し付けると歯と歯茎を傷めてしまうので、鉛筆の持ち方で歯ブラシを持つと優しく磨けます。
(2)細かく磨く
歯1から2本に歯ブラシをあて、1から2ミリメートル幅で小刻みに動かします。1か所20往復ぐらいを目安に細かく磨きます。
(3)順番に磨く
磨き残しがないように、磨く順番を決めましょう。
磨く順番の例(上図)
(4)歯ブラシの先をあてる
プラークをよく落とすための基本は、歯に対して歯ブラシを直角(90度)にあてて磨くことですが、お口の中の状況や磨く箇所に合わせて直角(90度)か斜め(45度)にして磨きます。
(5)歯ブラシを縦・横・斜めにして磨く
歯並びは人によって違います。歯並びがデコボコしている箇所は縦磨きがよいでしょう。前歯の内側は縦磨き、奥歯の内側は斜め磨き、外側全体は横磨き…など自分にとって磨きやすいやり方を探してみましょう。奥歯の噛み合わせは、かき出すように歯ブラシを動かしましょう。奥歯の裏など歯ブラシが届かないところはタフトブラシを使ってみましょう。
(6)歯と歯の間の汚れはフロスや歯間ブラシを使う
歯ブラシだけでは約50%のプラークしかとれないと言われています。フロスはホルダー付きのものが使いやすいのでお勧めです。歯茎や歯と歯の間に隙間がある場合は、隙間の大きさに合った歯間ブラシを使いましょう。
【備考】毎回できない人は寝る前にはやりましょう!
(7)舌で触って磨き残しをチェック
磨き残しがあるか、舌で歯を触ってみましょう。歯の表面がツルツルしていればプラークは落ちています。プラークがちゃんと取れているか確認したい場合は、プラークに色をつけて確認できる液体(歯垢染色剤)を使って確認する事もできます。
(8)最後に舌磨きも忘れずに
舌の表面の汚れを「舌苔(ぜったい)」と言います。鏡で見た時に舌の表面が真っ白な場合は舌苔がついています。これもプラークの塊で、口臭の原因になったり、味覚も感じづらくなってしまいます。舌ブラシを奥から手前に動かし軽くなでるように使います。1日1回、できれば起床時に行うとよいでしょう。
外出自粛で、生活リズムが変わると歯磨きがおろそかになりがちです。身体への入り口は「お口」です。その入り口が不衛生であれば健康を保つことはできません。感染症予防のためには「手洗い・うがい・歯磨き」が重要です。ご家族の皆さんで取り組みましょう。
第2回 だ液の効果
だ液にはお口の中を潤す以外に、多くの効果があるのをご存知ですか?
だ液は口腔内の細菌の増殖を抑え、口臭、むし歯、歯周病など様々なトラブルから守ってくれています。
だ液のはたらき スゴイ!だ液のパワー
- 歯や歯間に付着した食べかすやプラーク(歯垢)を洗い流す
- 口の中の細菌の増殖を抑える
- 酸性に傾いたお口腔の中を中性に戻し、むし歯を防ぐ
- 溶けかかった歯の表面を修復し、むし歯を防ぐ
- デンプンを分解し消化を助ける
- 粘膜を保護し、発声をスムーズにする
- 味を感じさせ、噛み砕いたり飲み込んだりしやすい塊にする
このようにだ液は、私たちの知らないところで多くの効果を発揮し、活躍しています。
今回はその中でも、『細菌の増殖を抑える効果』に注目しました
だ液中にはIgAと呼ばれる抗体が含まれています。
IgAは免疫物質の一種であり、だ液をはじめ、母乳、涙、腸内などに存在しており、口腔や腸管内などの粘膜面で病原体の感染に対して防御しています。
だ液のIgAが低下していると、風邪をひきやすくなるなど、呼吸器系の感染症にかかりやすい状態になると言われています。免疫を高めるためにだ液をたくさん出すということは、非常に効果的なのです!
だ液の分泌
通常、健康な成人では、1日あたり平均1.0リットルから1.5リットルものだ液を分泌していると言われています。 だ液の分泌は寝ている間は減少します。このとき、だ液の作用とその機能も低下するため、口腔内の細菌が増殖します。口腔内に歯周病菌などの病原菌があると、ウイルスが粘膜細胞に侵入しやすい状態になり、感染がおこりやすくなります。そのため、夜寝る前と、朝起きた時のお口のケアは非常に大切なのです。
具体的なお口のケアについては、第1回の記事に載っています。ぜひ合わせてごらんください。
次回、だ液を出すのにも効果的なお顔の体操や、だ液腺マッサージをご紹介します。
第3回 だ液をたくさん出すには
第2回では、だ液のもつパワーについて掲載しました。そこで今回は、だ液の分泌を促す方法について、お話したいと思います。
だ液はだんだん減る?
私たちのお口の中を常に潤しているだ液ですが、様々な原因で分泌量が減ってしまいます。最も大きな原因は、年を重ねるにつれ、だ液腺細胞が減少していくことがあげられます。また、だ液中の重要な成分も減っていくので、細菌などに対する抵抗力が弱くなっていくとも言われています。
他にも、
生活習慣や環境によるもの 口呼吸、ストレス、口腔が不潔な場合、乾燥した室内 など
病気や服薬によるもの シェーグレン症候群、糖尿病、降圧薬
など、一時的なものから疾患によるものまで、様々な理由でだ液が少なくなってしまうことがあります。
どうやってだ液を出すの?
だ液の分泌を促すためには、お口の中に3つあるだ液がよく出てくる場所(だ液腺)をマッサージすることが効果的です。
だ液腺マッサージ
他にもよく噛むことや、お口の中を刺激することでだ液の分泌が促進されます!舌を動かしたり、頬を動かすことも効果がありますので、ぜひ、おうちにいる時間で「きらり鎌ケ谷かお体操」を行いましょう。きらり鎌ケ谷かお体操(PDF:415KB)
次回は、だ液分泌にもつながりのある「噛むこと」について更新予定です。
第4回 噛むことの大切さ
よく噛むことはメリットがたくさんあります。
「卑弥呼の歯がいーぜ!(ヒミコノハガイーゼ)」という言葉は聞いたことがありますか?
これは噛むことのメリットの頭文字をつなげた標語です。
卑弥呼のイメージイラスト
「ひ」
肥満防止(ひまんぼうし)
よく噛むことで、満腹中枢を刺激し、肥満防止になります。
「み」
味覚の発達(みかくのはったつ)
食べ物の形やかたさを感じることができ、味覚が発達します。
「こ」
言葉の発音はっきり(ことばのはつおんはっきり)
あごの発達を助け、表情が豊かになったり、言葉の発声が綺麗になります。
「の」
脳の発達(脳の発達)
脳への血流を促進させ、脳の発達や物忘れ防止になります。
「は」
歯の病気予防(はのびょうきよぼう)
よく噛むことで唾液量が増え、唾液の働きで細菌を洗い流したり、再石灰化を促進させるためむし歯や歯周病の予防になります。
「が」
がん予防(がんよぼう)
唾液の酵素が食品の発がん性を抑え、がん予防になります。
「い」
胃腸快調(いちょうかいちょう)
唾液とよく混ざることで消化・吸収を助け、胃腸の働きを活発にします。
「ぜ」
全力投球(ぜんりょくとうきゅう)
よく噛むことで顎が発達し、歯並びが良くなり、また、口周りの筋肉も発達するので、噛み締める力が強くなり全身の力を出しやすくなります。体力や運動神経の向上、集中力を高めることができます。
噛む回数と時間の昔と今
目安はひとくち30回噛むことです。
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しかし「絶対に30回噛まなければいけない!」ということではありません。
例えばお寿司やお蕎麦など、噛み過ぎてまずく感じるのであれば美味しく感じる範囲で噛むことを意識してみましょう。
ポイントは噛み応えのある食べ物を積極的に選ぶことです。
長い年月を経て、私たちの噛む回数は減ってきています。
「ビジュアル版見てわかるすぐ使える楽しい食材 そしゃくで健康づくり 育てようかむ力」柳沢幸江著 少年写真新聞社より
昔はどんな食べ物を何回噛んで食べていたのでしょうか。
(画像「ビジュアル版見てわかるすぐ使える楽しい食材 そしゃくで健康づくり 育てようかむ力」柳沢幸江著 少年写真新聞社より)
弥生時代の食事は、米が主食となり、玄米を食べていました。また、魚や野菜・種子などを蒸したり焼いたりして食べていたようです。とてもかたいものばかりで、かなり噛み応えがあります。
鎌倉時代の食事は、強飯(こわいい)といったかたく炊いた米が主食でかたい食べ物が多く見られます。一汁一菜を基本とし、質素な食生活だったようです。
昭和時代の食事は噛み応えのある野菜や豆類などが多く見られます。また、米が半づき米(半精白状態の米)で、麦などが一緒に炊かれることも多かったようです。
そして現在、飽食(飽きるほど十分に食べること)の時代と言われ、色々な食べ物が食べられるようになりました。一方で、レトルト食品などが多く出回り、噛み応えのあまりない、やわらかい食品が多いのも現状です。また、かたい食べ物は敬遠される傾向もあるようです。
「美味しい=とろける、なめらか」とテレビでもよく言われるように、日本人は柔らかい食べ物を美味しく感じる傾向があるようです。
加工食品が多くなり味が濃くて柔らかい食べ物に変化したこと、多忙や夜型が多くなったことでゆっくりと噛んで味わう生活のゆとりがなくなってきていることなどが原因で噛む回数と食事時間が減ってきています。なるべく素材をそのまま美味しく食べることと、よく噛んで食事を楽しむ時間が現代には必要です。
噛むことで脳の活性化
サーモグラフィーで食べた後の顔の温度を比べたデータがあります。
(画像「ビジュアル版見てわかるすぐ使える楽しい食材 そしゃくで健康づくり 育てようかむ力」柳沢幸江著 少年写真新聞社より)
- プリンを食べた場合
- リンゴを食べた場合
- スルメを食べた場合
温度が低い箇所は青く、温度が高い箇所は赤く写っています。(写真は左を向いています)
このような温度の上昇は、血行が良くなることを示しています。よく噛むことはエネルギーの消費を高め、噛む筋肉も発達させます。また脳への血流量も高め、脳の活性化をもたらします。
よく噛んでゆっくり食べるポイント
- 食材は大きめに切る・硬めにゆでる
- 歯ごたえのある食材を使う
- 薄味にする
- ながら食いをしない
- 噛む回数と時間を意識
- 口いっぱいに食べ物を詰め込まない
- 食事の合間に水分をとり早食いを防ぐ
(画像「ビジュアル版見てわかるすぐ使える楽しい食材 そしゃくで健康づくり 育てようかむ力」柳沢幸江著 少年写真新聞社より)
新しい生活様式で、おうちでの食事が多くなったり、会話をしないで食べるようになったり、以前よりも誰かと食事を楽しめる機会が減ってしまいましたが、食べていることに集中して料理を味わう良いチャンスかもしれません。私たちは命をいただいているということを改めて意識して、感謝をしながら食に向き合ってみましょう。
次回は「歯周病について」です。
第5回 歯周病ってどんな病気?
歯周病とは、字の通り、歯の周りの組織(歯ぐきや歯を支えている顎の骨など)に炎症が起こっていることをいいます。実は歯周病には2つの段階が存在しています。
歯肉炎 | 歯ぐきにだけ炎症が起こっている状態。 |
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歯周炎 | 歯肉炎がさらに進行した状態。 |
「歯肉炎」の段階では、しっかり自分で歯みがきや歯と歯の間の掃除を行えば、徐々に炎症が収まり、もとの健康な状態に戻すことができます。
しかし、そのまま放置して「歯周炎」になってしまうと溶けてしまった骨はもとには戻らず、最終的には歯が抜けてしまう可能性もある病気です。
特徴
歯周病は「silent disease(静かなる病気)」と言われ、痛みや自覚症状がほとんどないまま進行していきます。腫れたりして気が付いた時には、すでに重度歯周病に進行してしまっている、ということも珍しくありません。
また、歯周病は大人、特に働く世代の病気だと思われがちですが、10歳頃、小中学生から見られる病気です。親の仕上げみがきの回数も減り、勉強や部活動で忙しいなど、歯みがきがおろそかになってくる時期から注意が必要です。
原因
歯垢(プラーク)
歯周病の原因はむし歯と同じ「歯垢(プラーク)」です。1ミリグラムの歯垢の中には、細菌が1億個以上存在しているとも言われています。その中にむし歯や歯周病それぞれの原因となる細菌が多く存在しています。
細菌の中でも、歯周病の原因菌は「嫌気性菌」と言われ、空気が嫌いな性質を持っています。そのため、口の中の空気がなるべく少ない場所、つまり「歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目)」の中へと入りこんでいきます。そして歯周ポケットの中で、毒素を出して歯周組織を破壊していくのです。
その他
歯周病の直接の原因は歯垢ですが、他にも「喫煙」「ストレス」「食習慣」「不規則な生活」など、歯周病を悪化させる危険因子は様々あります。
予防方法
丁寧な歯みがきをしましょう
最も大切なことは、原因となる歯垢をきちんと取り除くことです。歯垢はうがいでは落ちません。食後は歯みがきをしましょう。
また、歯周ポケットをきれいにすることも大切です。1日1回はフロスや歯間ブラシを使用しましょう。
規則正しい食生活を心がけましょう
歯垢のもとになる糖分の多い食品の取りすぎや、ダラダラ食いは避けるようにしましょう。
ストレスをため込まないようにしましょう
ストレスが原因で、食習慣や歯みがき習慣が変わることもあります。また体の抵抗力が弱まり、歯周病が悪化しやすくなることもあります。
禁煙に取り組んでみましょう
たばこの有害物質は体を守る免疫機能を狂わせ、抵抗力が落ちると言われています。傷を治そうと組織を守る細胞の働きを抑えてしまうため、治療しても治りが悪いことがあります。
他にも血管を収縮させることで血行不良となり、見た目上、出血や歯ぐきの腫れが抑えられることから、歯周病であることに気づきにくくなります。
定期歯科健診を受けましょう
歯周病は早期発見、早期治療が大切です。半年に1回ほどのペースで定期歯科健診を受けましょう。
市では節目の年齢の方を対象に歯周病検診を行っています。
第6回 歯周病がからだに及ぼす影響
歯周病を放置する危険は、口の中だけにとどまりません。歯周病の原因菌や歯周病の炎症物質が、歯ぐきの毛細血管から血液中に入り込み全身をめぐります。その結果、身体の各組織に悪影響を及ぼしたり、病気を悪化させたりします。
糖尿病
歯周病の炎症物質が、血糖を下げる際に必要な「インスリン」と呼ばれる物質の働きを阻害することで、糖尿病を悪化させることがわかってきました。そのため、歯周病を治療することで糖尿病が改善するとも言われています。反対に、糖尿病があると細菌に関する抵抗力が低下するため、感染症である歯周病も起こりやすく、悪化しやすくなるなど相互に関係しています。
誤嚥性肺炎
ものを飲み込む力が衰えてくると、だ液や食べ物が食道ではなく、気管へ入り込むこと(誤嚥)があります。その際、口の中の細菌が一緒に肺に入り込むことで、肺炎を引き起こします。
早産や低体重児出産
重度歯周病により炎症物質が増えると、それが「出産開始の合図」を引き起こし、陣痛や子宮筋収縮などが起こると考えられています。妊娠期はホルモンの関係など、お口のトラブルが起こりやすい時期ですので、意識してケアを行いましょう。
心臓・血管への悪影響
全身の動脈硬化を進行させてしまうことがわかっています。心臓の動脈硬化は狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また脳の血管では、脳梗塞、認知症の原因となることもわかってきました。
歯周病は口の働きだけでなく、身体に様々な悪影響があります。お口の中を清潔に保つことで、いつまでもおいしく食べ、元気に過ごしましょう♪
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